2017年2月7日火曜日

トランプ大統領の入国制限政策を批判する日本人研究者は、自らの所属する組織を正してから批判すべきである

題名で主張をすべて言い尽くしたので、おしまいでも良いが、ここでは、研究者の受入に伴う人物同定については、日本の大学も他国の批判を行うことができないことを指摘するため、報道された事例を元に、論拠となる事件を3件挙げておきたい。1件目は酒田短期大学(の留学生)、2件目は佐賀大学(大学院の留学生)、3件目は立命館アジア太平洋大学の教員の件である。おまけに4件目として、私の卒業(了)した学科での事件を挙げることができる。1・2・4件目は、大学院重点化と外国人留学生受入れ増加に伴う弊害であるとともに、テロ(4件目)や犯罪(1・2件目)への関与が疑われた事件に過ぎないが、3件目は比較的新しく、しかも邦人テロという甚大な実害が生じている事件について、教員の関与が濃厚に疑われているために、特筆されるべきである。この事件に触れないまま、トランプ政権の施策を批判する研究者がいるとすれば、その人物は研究者としての素養を欠くと批判されてもやむを得ないであろう。余分(で私の将来に不利)な物言いであることを承知で指摘するが、私の中では、安全を冠する研究分野についての立命館大学(グループ)のあり方は、相当に悪印象である。



本文よりはるかに長いおまけ

蛇足となるが、多国籍(=無国籍)巨大IT企業の経営陣がトランプ政権に対して批判的である原因は、海外からの優秀な人材供給が制限されるという事情にもよるであろうが、大学等の高等教育・研究機関とは異なる理由も併せ持つであろう。つまり、人材供給難だけが現状の批判に至る原因となっていないと考えられる。大統領選挙戦における反トランプ氏キャンペーンに深く関与していたことが認められる企業が含まれるためである。現時点に至る経緯を見れば、トランプ政権とこれらの大企業との間には、ヤクザチックな表現であるが、手打ちが必要なはずである。ゆえに、アメリカを代表するようなIT系大企業からの現在進行形の批判は、現政権サイドとの何らかの了解の下に進められていると考えることも、無理筋ではない。この可能性を示す兆候と、この双方の了解という状態の生み出す影響は、インテリジェンス業界に属するものである。本点については、私の方法がオシントに分類されるものであるとしても、これ以上の調査を進めるつもりはない。ただ、報道のあり方に違和感があるというのみである。

ここまでに指摘した材料を揃えた上で、職業集団を全体として評価してみれば、日本人研究者たちは、政治的な観点から、安全と名の付く分野については、昨今の安保関連法案反対の署名を除けば、賢明な表現活動・社会活動を進めてきたとはいえない。その割には、アメリカ国内において支出される100分の1程度の端金で、4周遅れくらいのレベルの防衛研究に手を染めようとしている。むしろ、外交研究とサイバー防衛(防衛のみ)にカネを突っ込むべきである。防衛研究については、田母神俊雄氏の公訴に係る恣意性を正すことができなければ、わが国にはフリーハンドがないものと考えるべきである。サイバー防衛については、TRON OSのテコ入れとWindows機の公的機関の重要部分からの排除を実現できなければ、やはりフリーハンドはないものと考えるべきである。ここでは、あえて極論を記してみたが、このような、セキュリティに係るどん詰まり状態を放置しておいて、今更、外国人研究者として、トランプ大統領の進める政策に対していち日本人が反対することは、どうにもセンスの悪いことである。他国の政策についてとやかく言うことは、十分に政治的である。国内の研究機関等に所属する研究者が、他国の政策に余計な口を挟む一方で、自国の大問題である福島第一原発事故を問題視しないことは、政治的である。かつ、日本の公費を投入されている職業人としては、臆病であり、無責任である。ましてや、アメリカ(と米国籍とみなされる企業等)は、わが国の研究者に対して、各種のフェローシップを提供してきた。その恩恵を受けた研究者が発言することは、日本国内での活動実績もコミで評価されることになろうから、慎重に言葉を選ぶ必要がある(その人物は、果たして、win-winの関係のみに言及してきたのであろうか。1%のみが利する政策のみに言及してきたのではないか、という疑惑が厳然としてある。)

わが国の研究者たちは、他国への留学生の救済を言う前に、たとえば、原子力工学研究界隈で傍流に追いやられていた研究者たちの救済を、優先して指摘すべきである。徐々に、彼ら少数派の事故直後の指摘の方が、原子力政策に大きな影響を及ぼし得た多数派の事故直後の公言よりも、実像に近かったことが公に認められつつある。正確な予測をなした研究者たちの政治的な名誉の回復や経済面・制度面での救済は、まったくと言って良いほどなされていない。原子力業界(と政界・学術界)の機能の正常化を求めない研究者たちの政治センスの悪さは、最後にはわが国をハードランディングに導く原因の一つである。その理路の詳細な説明は、現今のわが国のテロ対策の根幹にも関わるので、現時点では見合わせておく。ただ、本件に関連する限りでは、留学生の母国や以前の居留先におけるヒュミントを確立できずに、留学生を受け入れよとするような意見(#どこかの医者の意見、Yahoo!個人かに掲載)は、総じて無責任であることだけを指摘しておく。持論は、別の必要とされたはずの場で、必要とされる人に伝わるように、すでに述べてあるが、要点だけを繰り返して述べる。受入国のコミュニティを丸ごと移植して、そこで安全に対する責任を育成できる見込みがなければ、移民は認めるべきでない、というのが私の(体験的な)意見である。国・言語のコミュニティを研究者コミュニティに置き換えれば、留学生の受入方針へと転用可能である。公共安全分野を含めて、そのサラダボウル内の自治を確立しないと、テロ対策が機能しうる移民政策にはならない、というのが、他国を見たときの経験則である。




2019(令和元)年05月21日追記

本記事に取り上げたモハマド・サイフラ・オザキが20日に拘束されたとの報道[1]があった。彼の受入れ体制ならびに関与した人物たちの(現時点までの)行動は、今一度、検証され批判を受けても良いと思う。


[1] 邦人死亡テロ、中心人物拘束=元立命館大准教授の男-バングラ:時事ドットコム
(2019年05月21日19時43分、ニューデリー時事名義)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2019052101136&g=int

〔…略…〕今年3月にシリア東部でクルド人部隊に投降し、イラク北部スレイマニヤに身柄を移された。また、一緒に行動していた日本人の妻と子供2人は空爆で死亡したという。

同容疑者は16年のテロの際、バングラデシュ国内の過激派とISとの連絡役を務めたほか、資金調達や、バングラデシュの若者をISに送り込む際の勧誘役も担った疑いがある。警察が指名手配し、行方を追っていた。

2017年2月3日金曜日

オバマ大統領は第三次世界大戦を回避した人物として記憶すべきである

 一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構 研究員の部谷直亮氏は、『プレジデント』の2017年1月30日配信の記事[1]において、バラク・オバマ氏を無人機(ドローン)を用いた「爆弾魔」であると批判している。部谷氏は、米外交問題評議会(CFR)の報告を引用し、「2016年は2万6171発、15年は2万3144発」であるとして、子ブッシュ政権よりも桁違いに多いドローン攻撃を実行したと批判する。部谷氏は、オバマ氏が国家間戦争を主導しなかったから非戦の人であると理解することは誤りであるという論旨を提起している。さらに、部谷氏は、オバマ氏のドローン使用に係る政策・発言・思考が相矛盾するとさえ批判している。

 部谷直亮氏の批判は、オバマ氏が、第三次世界大戦の回避という、よりマシな選択(the lesser of two evils)を取ったことに言及しない点で、不公正である。オバマ政権時、アメリカ軍やNATO軍を本格展開する正規戦が生じていたとすれば、どの国においてであれ、民間人を含めた全陣営の被害者数は、ミカ・ゼンコ(Micah Zenko)氏のブログ[2]に2017年1月20日に示されたような数値と比べて、二桁違いとなっていたであろう。また、部谷氏は、オバマ大統領が自らターゲットの最終選定に関与していたことを指弾するが、この選定過程は、その内容次第で、ターゲットの人数を減らす方向にも作用するものであるはずである。(後世において、この点の検証が可能であるか否かは、疑わしいものではあるが。)あり得た状態との対比を経ることなく、被害が大きいと批判することは、20世紀以降の行政組織においても見られない杜撰さである。(わが国の行政組織は、対前年比・対前年同期比が大好きである。)蛇足であるが、(反実)仮想的な状態との対比は、近年の政治学における定性的・定量的研究双方の根幹に据えられている。

部谷氏の記事は、それ自体、失当な内容ではあるが、以前の私のオバマ氏への評価を図らずも肯定する内容となっているという点では、(私にとって)有用であった。私は、(2016年11月18日)において、「シリアにおける消極策のようにバラク・オバマ氏の「チェンジ」が分かりにくい」ものであると指摘した。オバマ氏は、大統領在任時、シリアにおける正規戦へとアメリカ軍を参加させることがついになかった。この事実を、ロシアの伸張にむざむざチャンスを与えたとみるか、第三次世界大戦を回避したとみるかは、後世や同時代の人々の自由ではあるが、私は、後者の意見を断然採用する。断定的となる危険を承知で表現すると、アメリカ大統領としてのオバマ氏は、ツンデレで皮肉屋で強かであった。部谷氏は、「デスノート」を持ち出しているが、ドローン攻撃にこの喩えを用いることが不適切であることはさておくとしても、近年のわが国における漫画文化に典型的なキャラ設定を有するオバマ大統領の思考・言動・政策を理解していない。

オバマ氏は、戦争屋一味の部下に囲まれた大統領であり、その政権内では、少数派の平和志向であった。このように理解すると、オバマ氏の消極的姿勢の理由が良く理解できるようになる。ヒラリー・クリントン氏や、(最近、トランプ氏に解任された)ジョン・ブレナン(John Owen Brennan)氏に代表される戦争屋勢力のプレッシャーがかかる中、通常人ならば決定後も苦しむであろう(人を殺すことになる)政策を強いられていたものと考えることができる。もちろん、最終責任者としての責任をオバマ氏に問うことは可能であろうが、オバマ氏が選択を拒否してケネディ大統領と同じ目に遭っていた場合、後に控えているのは、シリアを発火点とする第三次世界大戦であったことを念頭に置けば、人々の考え方も和らぐというものであろう。

 このようなオバマ大統領の「功績」を考えに入れれば、部谷氏の論考がきわめて不公正であったものと自然に結論を導くことができる。共和党寄りとはいえ、戦争屋一味のシンクタンクである米外交問題評議会の報告を利用してオバマ氏をディスるとは、部谷氏も、お里が知れるというものである。今後も、トランプ氏にすり寄るかの姿勢を見せるためにオバマ氏をディスるというスタイルを用いる日本人(?)は、テンプレの如く一定比率で湧くものと思われるが、そのディテールに注意すれば、今後の国際社会の平和にとって、有益であるか有害であるかの見極めは、容易に付くものであろう。米外交問題評議会の報告も、戦争屋の懐をそれほど潤すことのなかったオバマ氏に対して汚名を着せるという「制裁」の意味合いが存在するものと考えて差し支えないであろう。この報告の意図に同調するか否かは、戦争屋であるか否かの試金石の一つであろう。

[1] さようなら、オバマ「あなたは史上最悪の爆弾魔でした」 (プレジデント) - Yahoo!ニュース
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170130-00021210-president-pol

[2] Politics, Power, and Preventive Action Obama's Final Drone Strike Data - Politics, Power, and Preventive Action
http://blogs.cfr.org/zenko/2017/01/20/obamas-final-drone-strike-data/