#新規記事の執筆が滞ってますが、別の作業に忙しいだけです。一応、犯罪学の範疇に含まれる作業を実施するために、自分の時間を使用しているだけです。そのほかの事情は特段にはありません。強いて付け加えるなら、ある一事を除けば、本ブログに掲載してきた記事がおおよそ正しいものであることを公開情報から確認できていますので、誤字脱字・表現の誤りを除けば、記事を修正したり追記したりする必要性がないと考えて、手抜きしている部分はあります。
昨日から今朝に至るまでのマスメディアは「溶け落ちた」核燃料が2号機の圧力容器直下で発見されたことを伝えている。今朝(2017年1月31日朝刊)の読売・朝日・日経の三紙とも、東京電力の発表を一応伝えているが、特に日経は、渋々報道している印象を否めない。日経は、3面に記事を掲載する※1が、3機の原子炉とも、原子炉格納容器内に溶融燃料が留まっているかのようなイラストを提示している。朝日新聞は、1面※2と4面※3で大々的に取り扱うが、1面のイラストは、格納容器内に依然として溶融燃料が留まっているかのように示している。読売の1面記事※4も同様である。
読売・朝日・日経の三紙とも、もちろん、溶融燃料が圧力容器や格納容器を貫通する現象を示す「メルトスルー(溶融貫通)」という用語については言及しない。「メルトダウン(炉心溶融)」という用語は、政府により確定したものとして提示された表現であるから、朝日と読売の1面記事において、ともに用いられている。メルトスルーという現象がメルトダウンという現象に包含されると主張することは可能ではあるが、事実を正しく伝えることにはならない。メルトダウン(炉心溶融)とは、格納容器内にある核燃料が、高温のために溶け落ちることである。メルトスルー(溶融貫通)とは、溶融した核燃料が圧力容器や、圧力容器の外部にある格納容器の底を高温により溶かし、穴を開けて圧力容器外に落ちることである。今回の報道は、2号機で圧力容器のメルトスルーが生じたことを示すものである。つまり、御用学者と揶揄される人物たちの事故直後の発言は、改めて誤りであることが示されたことになる。
#2017年3月8日訂正:圧力容器の外部にある格納容器をも溶かし落とす現象は、メルトアウトと呼ばれる。すっかり間違えていたので、ここに陳謝して訂正する。
この一事に接するだけでも、「アンダーコントロールにあるのは、福島第一原発事故ではなく、わが国のマスメディアである」ということが良く理解できよう。
体制側の人物が不都合な現象を呼び表すために用語を言い換えるという現象は、第二次世界大戦末期にも見られた現象である。「転進」の語は「撤退」に代わるものであるが、瀬島龍三氏が幕僚内で持論を実現するために発案したものである。この経緯は、新井喜美夫氏が『転進 瀬島龍三の「遺言」』(講談社, 2008年8月, p.140)において、瀬島氏と親しく交流した経験をふまえ、紹介している。用語の言い換えは、井沢元彦氏が『なぜ日本人は、最悪の事態を想定できないのか』(祥伝社新書, 2012年8月)の全編にわたって「言霊信仰」として指摘するとおり、わが国では、今も、現実から目を逸らす効果をもたらすと信じられているようである。
言葉の言い換えは、話し手や聞き手の心証を変化させるかも知れないが、もちろん、現実そのものを変化させることはない。
読売1面記事のイラスト※4は、格納容器外に汚染水の存在を図示するが、この汚染水は、格納容器から漏れ出たものであろうか。格納容器の破損の有無こそは、国際社会を含め、原発ムラ外部の人間が注目すべきポイントである。東京電力とマスコミは、格納容器の破損の有無について、把握しているのであろうか。把握していて隠匿しており、かつ、その事実が発覚した場合には、これらの組織は、制裁を免れないであろう。
※1「原子炉直下に堆積物/福島原発2号機/初撮影、溶融燃料か/ロボで詳細確認へ」『日本経済新聞』2017年1月31日朝刊14版3面総合2(記名なし).
※2「原子炉下 溶けた核燃料か/福島第一2号機/黒い塊撮影」『朝日新聞』2017年1月31日朝刊14版1面(富田洸平・川原千夏子).
※3「調査ロボ 来月投入へ/福島第一2号機/東電「大きな一歩」」『朝日新聞』2017年1月31日朝刊14版4面総合4(富田洸平・杉本崇).
※4「炉心直下 溶融燃料か/福島第一2号機/黒い堆積物 確認」『読売新聞』2017年1月31日朝刊14版1面(記名なし).
2017(平成29)年2月3日追記
今朝の三紙朝刊は、いずれも2号機格納容器内の鉄製の通路に穴が開いたことを伝えている。溶融燃料は、どこまで達したのであろうか。政府発表は、1~3号機がいずれも水素爆発を起こしたとしている。水素爆発は、超高温のデブリに少量の水を掛けることにより水素が生成し、その水素が一定濃度に達した結果、生じる。「焼け石に水」の極端なバージョンである。それほどの超高温のデブリは、読売新聞の表現が読み手に示唆するかのように、鉄製の通路を溶かし伸ばしただけなのであろうか。