2021年1月31日日曜日

メモ:トランプ政権時の国務省による武漢ウィルス学研究所に係るファクトシート

#専門家にとっては参考になる水準の訳でしかないが、2021年1月15日付の米国務省によるファクトシートを("entry-content"内のみ)自分なりに翻訳してみた。公の組織が公開した文書の日本語訳であるから、わが国の著作権法にも引っ掛からんだろうし、手元に置いておくだけよりも、価値が増すものと考え、公開した。2021年1月31日現在の原典へのリンクは、以下。

https://2017-2021.state.gov/fact-sheet-activity-at-the-wuhan-institute-of-virology//index.html


ファクトシート:武漢ウィルス学研究所における活動について

報道官室

2021年1月15日

一年以上にわたり、中国共産党(CCP)はCOVID-19大規模感染の起源の透明かつ徹底的な調査を系統的に妨げ、その代わりに欺瞞や偽情報にのみ厖大なリソースを投じてきた。200万人近くの人々が死亡している。遺族は真実を知らされて然るべきである。透明性があればこそ、何がこの大規模感染を起こしたか、次の大規模感染をいかに防ぐか、学ぶことができる。

合衆国政府は、どこで・いつ・どのように、SARS-CoV-2として知られるCOVID-19ウィルスが最初に人類に伝染したのか、正確には知らない。我々〔合衆国政府〕は、感染した動物との接触を通じてなのか、中国の武漢にある実験室での事故の結果からなのか、アウトブレイクの始まりを確定できていない。

ウィルスは、感染した動物と人間との接触により自然に発生し、自然界における流行と一致したパターンで拡大したのかも知れない。もしくは、ごく少数の個人が最初期段階に曝露、かつ、無症状性感染が引き続いて生じるという実験室での事故ならば、自然界でのアウトブレイクに類似したものになるのかも知れない。偶然にかつ潜在的な形で意図せぬ曝露が生じるリスクが増すような環境下で、中国内の科学者は、動物由来のコロナウィルスを研究してきている。

CCPの秘密主義と権力統制に対する致命的といえる執念の結果、中国及び世界中の公衆衛生にツケが回ることとなっている。COVID-19の起源は精査に値するが、本ファクトシートでは、以前に情報公開された情報と公開の情報源による報告とをつなぎ合わせ、その起源に係る3点に光を当てる。

1. 武漢ウィルス学研究所(WIV)内での病気

  • 2019年の秋、〔つまり〕アウトブレイクの最初の症例が確定される前、WIV内の幾人かの研究者がCOVID-19や季節性の一般的な病気の両方と合致する症状を伴う病気に罹ったと信ずる理由を、合衆国政府は有している。これは、WIV上級研究者の石正麗(Shi Zhengli)による、WIVのスタッフ及び学生はSARS-CoV-2またはSARS関連のウィルスに感染していないとする、公式の「感染ゼロ」発言の信憑性への疑問を起こさせるものである。
  • 事故による実験室内での感染は、中国や別の国において、過去のウィルス〔性の感染症の〕アウトブレイクを引き起こしているが、この中には2004年の北京におけるSARSのアウトブレイクが含まれており、9名に感染、1名を死亡させている。
  • CCPは独立系ジャーナリスト、調査官、世界の保健当局によるWIV研究者らへの聴き取り作業を妨害し続けており、聴き取り対象者の中には、2019年秋に病気になった者も含まれる。この〔COVID-19〕ウィルスの起源について信用できる調査というものがあるとすれば、その調査には、これら〔WIVにて病気に罹った〕研究者らへのインタビューが含まれており、かつ、未報告となっている彼らの過去の病気についての完全な説明が含まれていて然るべきである。

2. WIVにおける研究

  • WIVの研究者らは、RaTG13というコウモリのコロナウィルスを扱う実験を遅くとも2016年までには開始、この実験は、COVID-19のアウトブレイクの前に中止された兆候が認められておらず、WIVは、2020年1月にこのウィルスがSARS-CoV-2に最も近いサンプルであることを確認している(96.2%の類似性)。WIVは、2003年SARSのアウトブレイク後に国際的なコロナウィルス研究の拠点となり、それ以来、同所では、マウス、コウモリ、センザンコウを含む動物が研究されている。
  • WIVは、キメラウィルスを製造するための「機能獲得」研究を実施した記録を出版している。WIVは、2013年、雲南省でSARS状の病気により数人の鉱夫が死亡した後、洞窟から「RaTG13」ウィルスを採取しているが、同研究所は、COVID-19に最も近い「RaTG13」を含め、ウィルスの研究記録について、一貫してもいないし、透明性を確保してもいない。
  • WHO調査官は、COVID-19アウトブレイク以前のコウモリ及び他の動物のコロナウィルスに係るWIVの業務記録にアクセスできねばならない。徹底的な調査の一部として、調査官らは、RaTG13や他のウィルスを利用したWIVによる研究のオンライン記録を、なぜWIVが改変し後に削除したのか、十全な説明を受けることができなければならない。

3. WIVにおける秘密軍事活動

  • 北京にとり、秘密と非開示は日常的な慣行である。中国は生物兵器条約の下で明らかな義務があるにもかかわらず、確認可能な形で生物兵器を廃棄もせず文書化も進めてこなかったが、これに対し、合衆国は何年にもわたり公に懸念を表明してきた。
  • WIVは文民の施設であると自身を規定してきたが、合衆国は、WIVが研究出版及び秘密計画について中国軍と協力してきたと認定している。WIVは機密研究に従事してきており、遅くとも2017年以後には、中国軍のための実験室内での動物実験が含まれている。
  • 合衆国及びWIVで文民研究に協力または資金援助した他の資金協力者は、我々の関与した研究資金がWIVにおける中国の秘密軍事研究計画に転用されなかったか否かを見極める権利及び義務を有している。

本日の開示〔注:revelationsには啓示の意も〕は、COVID-19の中国内の起源について隠された事実の表面をなぞるものに過ぎない。COVID-19の起源を探るための調査を信用に足るものとするためには、武漢の研究ラボへの完全かつ透明性の確保されたアクセスが必須であり、そのアクセス対象には、施設、サンプル、人員、記録が含まれる。

この世界的流行(パンデミック)に対し世界が戦う中、一年以上の遅れを経て、WHO調査官が調査の途に就いたところであるが、ウィルスの起源は明らかにされていない。合衆国は、信用に足る完全な調査を支援するためにあらゆる努力を継続するが、この努力には、中国当局で本件を所掌する部門に対し、透明性を要求し続けることが含まれる。


本ブログは、当初より、知性で分析可能と見做される公開の材料を分け隔てなく分析することを通じて、アカポスに復帰できるやも知れない望みを繋ぐことを目的としてきたが、そうである以上、本来ならば、本記事においても、上掲ファクトシートを、全力を尽くして分析すべきであるのかも知れない。が、時間が掛かり過ぎる。私自身の生計の維持にも役立たない。しかも、後知恵では確実に認知できるようにはなっているが、「ジュピター計画」に係る煙幕を真面目に分析した結果、当時、身なりの良さそうなオッサンアイコンからのアプローチを受けたりと、嬉しくないことだらけである。直前の一文だけでも、本稿を私のサービス精神の発露だと見抜けた読者は、慧眼である。